禁忌の花 〜最強になったらイケメン寄ってきた〜

009.小さな居場所

「……ところで」


焚き火の向こうにいる少年へ、私はもう一度声をかけた。


「あなた、名前は?」


さっき手当してもらった指を見る。

綺麗に巻かれた布。
こんな小さな傷、放っておいても大丈夫だっただろうに、それでもわざわざ手当してくれた。


……見た目によらず、優しい人なのかもしれない。


「……シオン」

「え?」

「シオン・クロフォード」


淡々と名乗る。


「シオン……」


口の中で、その名前を転がしてみる。


なんだか、彼にぴったりだ。

静かで、少し冷たくて。でも、どこか綺麗な響き。


「……いい名前だね」


シオンがこちらを見る。


「よろしくね、シオン」


私が笑うと、彼はほんの少しだけ目を細めた。


「……お前は?」

「私?」


そういえば、まだ名乗っていなかった。


「アイリス・レイン」

「……アイリス」


小さく呟かれた自分の名前が、妙に耳に残った。


「うん。アイリス」

「……」

「どうしたの?」

「……別に」


シオンはそう言って視線を逸らした。


どうしたんだろう、変な人だな。

……まぁ、でも。


「シオンって、思ってたより優しいんだね」

「……は?」

「だって、こんな小さな怪我まで手当してくれたし」

「普通だろ」

「だから、普通じゃないよ」


私の言葉に、シオンは少し目を見開いた。


「私だったら、こんな面倒なこと絶対してあげないもん」

「お前……」


呆れたように見られる。


「……自分で言うなよ」

「ふふっ」


なんだか、少しだけ楽しくなってきた。

ルカがいなくなってから、こんなふうに誰かと普通に話したのは久しぶりだった。


……いけない。今はそんなことを考えている場合じゃない。

私はルカを探しているんだから。


「じゃあ、シオン。いろいろありがとう」
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