禁忌の花 〜最強になったらイケメン寄ってきた〜
翌日、私たちは森を抜け、初めて見る街へ足を踏み入れた。


「……わぁ」


思わず、足が止まる。


人、人、人……見渡す限り、人で溢れていた。

色とりどりの屋台、知らない食べ物、聞いたことのない言葉、行き交う馬車の音。森の中で暮らしていた私にとっては、何もかもが新鮮だった。


「……すごい」

「そんなに珍しいか?」


隣を歩くシオンが、少しだけ首を傾げる。


「うん。私、こんなに人がいるところ初めて来た」

「……そうか」


それだけ冷たく言い放ったけど、ほんの少しだけシオンの歩く速度が緩んだ気がした。

私を置いていかないように。


……やっぱ気のせいかな。


「ほら、あれ」


フィンが前方を指差すと、そこには周りの建物より一回り大きな建物があった。

入口には、剣や盾の紋章。


「ここがギルドだ」

「……ここが」


シオンが扉を開けた瞬間、空気が変わった。

ざわめき。金属の擦れる音に、低い話し声。壁にはたくさんの依頼書が貼られている。


___強そうな人ばかりだ。

大きな斧を背負った人、傷だらけの鎧を着た人、腰に剣を差した人。私たちと同じくらいの年齢の子供なんて、一人もいない。


「……すごい」


思わず小さく呟く。


「何が?」


フィンが聞く。


「みんな、強そう」

「……実際、強いよ」


フィンは少しだけ声を落とした。


「ギルドにいるのは、基本的に戦える人だけだから」


その言葉に、私は壁へ目を向ける。

依頼書が、ずらりと並んでいた。
迷子の子猫探し、薬草の採取、護衛、魔物討伐。それから___


「……アビス捜索?」


指先が止まる。

……見間違いじゃない。
そこには確かに『アビスに関する情報を求む』と、そう書かれていた。
< 52 / 59 >

この作品をシェア

pagetop