禁忌の花 〜最強になったらイケメン寄ってきた〜
「関わった人間が、無事に帰ってきたって話はほとんど聞かない」


背筋が、ぞくりとした。

それ以上聞きたくないのに、耳だけはフィンの言葉を拾ってしまう。


「だから、ここで依頼を出しても……」

「フィン」


シオンが低く名前を呼び、フィンは口を閉じた。


「……悪い」

「ううん」


私は首を横に振る。

正直、怖いけど、その名前を知ってしまった以上___私はもう、知らなかった頃には戻れない気がした。


「……シオン。ギルドって、アビス以外にもいろんな依頼があるんだよね」

「あぁ」

「じゃあ……私も依頼を受けられる?」


シオンがこちらを見る。


「お前が?」

「うん」


少しだけ拳を握る。


「もっと強くなりたいから」


シオンは何も言わずに、しばらく私を見つめてから___


「……焦る必要はない」


その声が、妙に優しかった。

私は小さく笑う。


「分かってる」


……たぶん。まだ、何も分かっていない。

この街のことも、ギルドのことも、アビスのことも。そして、あの日ルカを連れていった人たちが何者なのかも。


けれど___一つだけ、私は初めて知った。

この世界には、私がまだ知らないものがあまりにも多い。
< 54 / 59 >

この作品をシェア

pagetop