ただ静かに、君とページをめくりたい
◇
次の週から、図書委員の当番が始まった。
支度していると、ふいに机に影が落ちた。
見上げると同時に、声がした。
「西本さん、行こう」
汐留くんが、私の席の近くまで来ていた。
え、今日も一緒なの?
この前だけかと思っていた。
内心動揺しながらも、断る理由もないので、
「う、うん」
と頷いた。
--なんで声をかけてくれるんだろう。
汐留くんの背中を見て考える。
それとも、普通は一緒に行くものなの?
去年の男子は途中から来なくなったから、普通はどういうものなのか分からない……。
私たちは今日もお互い何も話さず、図書室へ向かった。
◇
汐留くんのいる図書室は、とてもにぎやかだった。
「汐留、本当に図書委員してるねー」
「汐留くん、次の当番いつなのー?」
「当番終わったら遊ぼうよ〜」
女の子たちが、汐留くん目当てで図書室に来ていた。
汐留くんが座るカウンターの前で、楽しげにしゃべっている。
図書室は、静かな場所とは言えなくなってしまった。
そんな女子たちに対して、汐留くんは
「無理」
「さあね」
「今当番中」
と言ったり、無視したり。
驚くほどそっけない。
さすがに本を借りる人がいれば、仕事をせざるを得ないけど。
私なら、こんなにはっきり言えないので、ちょっとだけ羨ましいとも思ってしまった。
私は書棚の整理などして、極力目立たないようにした。
◇
しばらく本を整理していると、ふいに人の気配がした。
気配がする方を見ると、汐留くんがいつもの真顔で、私の近くに立っていた。
図書室を見渡す。
図書室の中央にある木製のカウンター、白いテーブルが並ぶ閲覧スペース、木製の書棚……。
いつの間にか、誰もいなくなっていた。
汐留くんが口を開いた。
「西本さん、ごめん騒がしくて」
えっ?
謝ってくれてるの?
私は慌てて、手を振りながら言った。
「ううん!汐留くんのせいじゃないよ」
汐留くんは、
「いや‥‥‥」
と言った。
それから少しうつむいて、首の後ろに手を当てながら呟いた。
「こんな、つもりじゃなかったんだ……」
「えっ?」
どういう意味だろう?
首を傾げる。
しかし、汐留くんは
「返却棚にある本、戻してくる」
とだけ言って、行ってしまった。
◇
次の当番も、私は汐留くんに声をかけられ、一緒に行った。
今日は二人でカウンターに並んで座っている。
パソコン画面を見ながら、私は蔵書検索のやり方を汐留くんに説明している。
「ここをクリックすると出てくるよ」
汐留くんは画面をじっと見て頷く。
汐留くんって真面目だなぁ。
この前も騒がしくなったこと謝ってくれたし。
説明をしていると、
「やっほー」
「汐留、本借りに来たよー」
と女の子たちが四人くらいでやってきた。
気のせいか、汐留くんの眉がぴくりと動いた。
女子たちは、私に何か言いたげな視線を送ってくる。
多分、席を外して欲しいんだろうな……。
私は「じゃあ、また」と言って、立とうとした。
その時--。
「西本さん」
汐留くんが私を呼び止めた。
私は驚いて汐留くんを見る。
汐留くんは真剣な表情で私を見ていた。
--どうしたんだろう。
次の週から、図書委員の当番が始まった。
支度していると、ふいに机に影が落ちた。
見上げると同時に、声がした。
「西本さん、行こう」
汐留くんが、私の席の近くまで来ていた。
え、今日も一緒なの?
この前だけかと思っていた。
内心動揺しながらも、断る理由もないので、
「う、うん」
と頷いた。
--なんで声をかけてくれるんだろう。
汐留くんの背中を見て考える。
それとも、普通は一緒に行くものなの?
去年の男子は途中から来なくなったから、普通はどういうものなのか分からない……。
私たちは今日もお互い何も話さず、図書室へ向かった。
◇
汐留くんのいる図書室は、とてもにぎやかだった。
「汐留、本当に図書委員してるねー」
「汐留くん、次の当番いつなのー?」
「当番終わったら遊ぼうよ〜」
女の子たちが、汐留くん目当てで図書室に来ていた。
汐留くんが座るカウンターの前で、楽しげにしゃべっている。
図書室は、静かな場所とは言えなくなってしまった。
そんな女子たちに対して、汐留くんは
「無理」
「さあね」
「今当番中」
と言ったり、無視したり。
驚くほどそっけない。
さすがに本を借りる人がいれば、仕事をせざるを得ないけど。
私なら、こんなにはっきり言えないので、ちょっとだけ羨ましいとも思ってしまった。
私は書棚の整理などして、極力目立たないようにした。
◇
しばらく本を整理していると、ふいに人の気配がした。
気配がする方を見ると、汐留くんがいつもの真顔で、私の近くに立っていた。
図書室を見渡す。
図書室の中央にある木製のカウンター、白いテーブルが並ぶ閲覧スペース、木製の書棚……。
いつの間にか、誰もいなくなっていた。
汐留くんが口を開いた。
「西本さん、ごめん騒がしくて」
えっ?
謝ってくれてるの?
私は慌てて、手を振りながら言った。
「ううん!汐留くんのせいじゃないよ」
汐留くんは、
「いや‥‥‥」
と言った。
それから少しうつむいて、首の後ろに手を当てながら呟いた。
「こんな、つもりじゃなかったんだ……」
「えっ?」
どういう意味だろう?
首を傾げる。
しかし、汐留くんは
「返却棚にある本、戻してくる」
とだけ言って、行ってしまった。
◇
次の当番も、私は汐留くんに声をかけられ、一緒に行った。
今日は二人でカウンターに並んで座っている。
パソコン画面を見ながら、私は蔵書検索のやり方を汐留くんに説明している。
「ここをクリックすると出てくるよ」
汐留くんは画面をじっと見て頷く。
汐留くんって真面目だなぁ。
この前も騒がしくなったこと謝ってくれたし。
説明をしていると、
「やっほー」
「汐留、本借りに来たよー」
と女の子たちが四人くらいでやってきた。
気のせいか、汐留くんの眉がぴくりと動いた。
女子たちは、私に何か言いたげな視線を送ってくる。
多分、席を外して欲しいんだろうな……。
私は「じゃあ、また」と言って、立とうとした。
その時--。
「西本さん」
汐留くんが私を呼び止めた。
私は驚いて汐留くんを見る。
汐留くんは真剣な表情で私を見ていた。
--どうしたんだろう。