屋敷を守るための契約結婚だったのに、気づけば冷徹社長に囲い込まれていました
「……私は、あなたが社長とご結婚されたとき、正直に言えば、あなたにも疑問を感じていました」
「え?」
あまりにも率直な言葉に思わず聞き返す。
そういえば前にも、結婚に際して、社長が何を考えているのかよくわからないというような話していた。
「少なくとも九条さんは、社長を理解しようとはなさらないだろうと……そう思っていたんです」
その言葉に、私は反論できなかった。だって事実だ。
社長を知りたいと思ったことなどなかった。むしろ避けていた。
嫌いだったし、関わりたくなかったし、この結婚だってとにかく早く終わらせたい一心だった。
だから綿貫さんの評価は、きっと間違っていない。
けれど――なぜか今は違う。
今日みたいに、いつもと違う表情を見れば理由を知りたくなる。大丈夫かなと、気になる。
そんな自分に気づき、私は小さく視線を落とした。
すると綿貫さんが穏やかな声で続ける。
「ですが……私の勘違いだったのでしょうか。少なくとも今の九条さんは、きちんと社長をご覧になっています。社長もきっと最初から、あなたがそのような方だと分かっていたんでしょうね」
それは買いかぶりすぎだ。思わず手を横に振った。
綿貫さんはそんな私の反応を見て、小さく笑った。
その笑みは秘書としての営業用の笑顔ではなく、ただ優しいものに見えた。