屋敷を守るための契約結婚だったのに、気づけば冷徹社長に囲い込まれていました
「おかえりなさい」
声をかけると、社長がわずかに目を見開く。まさか起きているとは思わなかったのだろう。
「ただいま。まだ起きていたのか」
社長は腕時計に目をやりながら眉を寄せた。
「早く寝ないと業務に差し支えるぞ」
「分かってます。でも、眠れない日だってありますから」
「そうか」
短い返事。と思ったら、私を覗き込むようにする。
「何か会社であったのか?」
不意にそう聞かれ、私は一瞬言葉に詰まる。
いや、それはこっちの台詞でしょう。思わずそう言いたくなった。
役員会議のことも、親族の反発のことも……あなたの方が大変に決まってるじゃないか。
けれど、それを口にするのは違う気がした。
「別に何もありませんよ。ただ眠れなかっただけです」
「そうか」
社長はそれ以上追及しなかった。私は立ち上がる。