屋敷を守るための契約結婚だったのに、気づけば冷徹社長に囲い込まれていました

 ある日曜の夜の夕食後、私が子どもたちの居場所づくりについて「最近、運営費が少し厳しくて」と何気なく漏らしたとき。

「必要経費なら申請書を作れ」

 社長は仕事用のタブレットに目を落としたまま、淡々とした口調で言った。

「え?」

 思わず聞き返した私に、社長はようやく顔を上げると言葉を続ける。

「地域支援活動としてグループ名義で補助を出せる可能性がある」
「そんなことができるんですか?」
「できる可能性があると言っただけだ。朝霧グループでは地域支援活動もしているからな」

 ぴしゃりと言い切られ、私は思わず肩をすくめた。
 けれど社長は気にした様子もなく続ける。

「ただし、曖昧な運営は認めない。利用人数、年間予算、必要経費、活動実績、今後の見込み、その辺りの数字はきちんと出せ。感情論だけで金は動かない」
「分かってます」
「本当に分かっているなら資料を作れ。うちの総務の人間だ。それくらいはできるだろう」

 優しい言葉で励ましてくれるわけでもないし、『大変だな』と労ってくれるわけでもない。
 それでも彼の言葉に、今はちゃんと別のものが見える。

 確かに厳しいけど、それは突き放しているのではなく、実際に助けるために必要な要件を言っているだけなのだと、今の私には分かる。
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