屋敷を守るための契約結婚だったのに、気づけば冷徹社長に囲い込まれていました

 雨が降る金曜日の夕方。
 月末処理と役員会議の準備が重なった総務部は珍しく修羅場と化しており、電話はひっきりなしに鳴り続ける。

 私も朝からほとんど席を立つ暇もないままパソコンへ向かい続けていた。

「九条さん、このデータ修正お願い!」
「はい、今やってます」
「こっちの確認もお願い!」
「分かりました。でも、少しだけ待ってください!」

 矢継ぎ早に飛んでくる依頼へ返事をしながらキーボードを叩き続けているうちに、気づけば外はすっかり暗くなっていて、窓ガラスには雨粒が細かな筋を描きながら流れ落ちていた。

 残業時間はかなり長くなり、先ほどまで慌ただしかったフロアから少しずつ人が減り始めた頃、私はようやく最後の作業を終え、椅子の背もたれへ体を預けた。

 とはいえ、まだ一つだけ仕事が残っている。
 私は席を片付けると、送付用の封筒を抱え、席を立った。

 本来であれば社内の郵便窓口へ持ち込めば済む話なのだが、そちらの受付は五時で終了するため、残業になった日は帰宅途中に近くの郵便局へ立ち寄るのが半ば慣例になっている。

 今日は雨だし面倒だなと思いながらも、私はエレベーターへ向かった。
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