屋敷を守るための契約結婚だったのに、気づけば冷徹社長に囲い込まれていました

「九条さん」

 すると背後から声が飛んでくる。
 振り返ると森本くんだった。

 彼も仕事を終えたばかりらしく、肩には鞄が掛けられている。

「まだ残ってたんですね。お疲れ様です」
「森本くんもお疲れ様」

 そう言って二人でエレベーターへ乗り込む。
 疲れているせいか会話もそこそこに一階へ到着し、会社の外へ出たところで私は立ち止まった。

「私は郵便局へ寄るからここで」

 そう言って別れようとしたのだが、なぜか森本くんもそのままついてくる。
 私は首を傾げた。

「こっちじゃないでしょ?」
「夜遅いですし、危ないので一緒に行きます」
「危ないって……」

 私は周囲を見回す。ここはオフィス街だ。
 時間は遅いとはいえ、駅へ向かう会社員も多く、人通りが途絶えているわけではない。

「大丈夫よ」
「俺が行きたいんです」

 そう言って森本くんは笑った。
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