屋敷を守るための契約結婚だったのに、気づけば冷徹社長に囲い込まれていました
「あ、あの……社長」
声を掛けても、社長は振り返らないまま前を歩き続ける。
怒っている。それも、おそらく私が想像している以上に……。
私は戸惑いながらももう一度声を上げた。
「社長!」
その声でようやく我に返ったのだろう。
社長の足が止まり、掴まれていた手がゆっくりと離される。
私はその場に立ち止まったまま、少しだけ乱れた呼吸を整えて目の前の人を見上げた。
街灯の光が社長の顔を照らしている。
社長は何かを飲み込むように黙り込み、わずかに視線を伏せ、それからようやく私へ視線を向ける。
「……すまない。夏音が触れられているのを見たら、我慢できなかった」
胸の鼓動がさらに激しくなり、うるさい。
っていうかやっぱりさっきから『夏音』って呼び捨てだし……。