屋敷を守るための契約結婚だったのに、気づけば冷徹社長に囲い込まれていました

 社長の変化はむしろそれから増していった。
 最初は気のせいだと思おうとしたし、たまたま機嫌が良かっただけだと自分に言い聞かせてもいたのだけれど、何日か一緒に暮らしているうちに、どう考えても以前とは違うと認めざるを得なくなった。

 ある日の深夜の出来事だった。

 玄関の扉が開く音がして、まだ眠っていなかった私はソファに座ったまま顔を上げる。
 仕事から帰宅した社長は、少しだけ疲れた様子を見せながらも真っ直ぐこちらへ歩いてくると、首元を緩めるようにネクタイへ手をかけ、そのまま器用に結び目をほどきながら口を開いた。

「これから火曜と金曜はなるべく帰れるようにする」
「え?」

 突然の宣言に目を瞬かせると、社長は脱いだ上着を腕に掛けたまま続けた。

「その日は夕食を頼んでもいいか」
「それはもちろん大丈夫ですけど……」

 どうせ毎日自分の分は作っているのだから、一人分増えるくらいで手間が劇的に変わるわけではないし。そもそも契約上は家事を担当するとなっているのだから断る理由などない。

 ただ、これまでは帰宅時間も不規則だったし、顔を合わせても短い会話を交わす程度だったのに、週に二回でも一緒に夕食を食べられる日が増えるのだと思うと、それだけで少しだけ楽しみだと思っている自分に気づき、私は慌ててその感情に蓋をする。
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