屋敷を守るための契約結婚だったのに、気づけば冷徹社長に囲い込まれていました
「大丈夫ですよ。それより清正さんの方が……」
心配です、と言いかけて慌てて言葉を飲み込む。
私なんかに心配されるのは、きっと嬉しくないだろうし、何よりこの人はそんな弱音を吐くタイプではない。
けれど、先日の会議で見た少しだけ緊張した顔を思い出すたびに、私はできることなら、もうあんな表情をさせたくないと思ってしまうのだった。
「はい。ぜひ参加させていただきますね」
「そうか」
私が頷くと、清正さんはほんの少しだけ表情を緩め、それから思い出したように続ける。
「じゃあ、まずは服選びからだな」
「服?」
「パーティー用の服だ」
「……あ」
言われて初めて気づき、私は間抜けな声を漏らした。
考えてみれば、そんな場所に着ていける服なんて一着も持っていない。
仕事用のスーツや普段着ならともかく、不動産業界の重役や朝霧家の親族が集まるような華やかな席に相応しい服など、これまでの人生で必要になった覚えがなかったのだから当然だ。
そして清正さんは、そんな私の事情も最初から分かっていたらしかった。