屋敷を守るための契約結婚だったのに、気づけば冷徹社長に囲い込まれていました
原口元総務部長と再会したのは、本社で開かれた出向元管理職会議の日だった。
部長が地方へ出向してから一年以上が経ち、久しぶりに本社へ顔を出したのだ。部長は会議終了後のラウンジで数人の社員に囲まれながら談笑していて、その姿を見つけた私は懐かしさを覚えながら近づき、小さく頭を下げた。
「原口部長、お久しぶりです」
「おぉ、九条さんか。元気そうだな」
「はい。原口部長もお変わりないようで」
以前より柔らかな雰囲気になった――そんな印象を抱きながら言葉を交わすと、原口部長は「少し時間あるか」と笑い、私は頷いて近くのソファへ腰を下ろす。
部長は二人分のコーヒーを持ってきてくれて席に着いた。
「ありがとうございます。……向こうでの仕事はどうですか?」
「忙しいけど、皆、定時には帰るから、最初は驚いたんだよ。それに遊ぶ場所も飲む場所もないから、おかげで後は家族との時間だ」
そう言って原口部長は明るく笑った。
原口部長は、地方に出向になった。部長は本社で仕事するのが生きがいだと言っていたので、異動するときはかなり落ち込んでいた。今も元気をなくしているのだろうと思っていたが、表情は異動前より明るい。