屋敷を守るための契約結婚だったのに、気づけば冷徹社長に囲い込まれていました

「そういえば、これ。宝石箱に入れたままにしていただろう。きちんと身に着けていけ」

 そう言って清正さんが取り出したのは、あの結婚指輪だった。
 仕事中はつけられないし、かといってなくすのが怖かった私が悩んでいると、清正さんが、保管用にと宝石箱を用意してくれたのだ。

「あ、そうでした」
「左手、出して」

 そう言われて、左手を差し出す。彼はその手を取ってゆっくり指輪をはめた。
 なんだか心臓が落ち着かない。

 それなのに「似合ってるな」と笑顔までつけてくるからなおさらだ。
 この人は、本当に悪い男かもしれない。

 真剣に考えたとき、綿貫さんが前方から声をかけてきた。

「本日は会長もお見えになりますからね」
「会長!?」

 私は反射的に前の座席へ身を乗り出した。

「ど、どうしてもっと早く言ってくれなかったんですか!?」
「言ったらさらに緊張するだろう。俺が当日まで伝えるなと言っていた」

 横から平然と答えた清正さんに、私は思わず振り返る。

「今日聞いたって、当然緊張しますよ!」
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