屋敷を守るための契約結婚だったのに、気づけば冷徹社長に囲い込まれていました

 だって会長とは最初に挨拶して話しただけで、その後はほとんど話していないのだ。
 しかもあのとき、会長が和やかに話してくれたのは覚えているが、私は緊張で何を話したのかさえあまり記憶にない。

 そんな相手と改めて顔を合わせるのだと思うと、緊張しないほうがおかしかった。
 緊張のあまり、薬指にはまった指輪を握った私に、清正さんは穏やかな眼差しで言う。

「気にするな。会長は会うのを楽しみにしている」
「本当にですか?」
「ああ」

「社交辞令とかじゃなくて?」
「違う」
「本当に?」
「何度確認するんだ。楽しみにしてるよ」

 楽しみにしていると言われれば言われたで、その期待に応えられなかったらどうしようという不安まで湧いてくる。
 結局、会場へ到着するまで何度も指輪に触れていた。
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