屋敷を守るための契約結婚だったのに、気づけば冷徹社長に囲い込まれていました
会場へ到着して間もなく、まだパーティーが本格的に始まる前だったにもかかわらず会長が真っ直ぐこちらへ歩いて来る姿が見え、私は思わずまた指輪に触れていた。
しかも、清正さんが挨拶のため少し席を外した隙だった。
「夏音さん、お久しぶりですね」
「ご無沙汰しております」
慌てて頭を下げると、会長は以前よりもずっと柔らかな表情で微笑み、その穏やかな空気に少しだけ緊張が和らいだ。
「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ」
「申し訳ありません……」
「謝罪なんて必要ありません。今日も挨拶が終わったらすぐに会場を出なければならなくてね。でもこうしてあなたに会えてよかったと思っていたんです」
そう言いながら会長は私の様子を見守るように視線を向ける。
「清正との生活はいかがですか」
「えっと……」
突然そう聞かれ、私は少し考え込む。何と答えるのが正解なのだろう。
契約結婚ですから、なんて言えるはずもない。
けれど嘘ばかり並べるのも違う気がして、私は正直な気持ちを口にする。