屋敷を守るための契約結婚だったのに、気づけば冷徹社長に囲い込まれていました
混乱で頭が真っ白になりかける一方、別の考えも浮かぶ。
相手が社長だとしても、購入者が会社相手ではなく個人なら、まだ交渉の余地があるのではないか――と。
私はぎゅっと手を握り締め、それから勢いよく頭を下げた。
「不躾なお願いだというのは分かっています。でも……この屋敷を私に譲っていただけませんかっ」
自分でも声が震えているのが分かった。けれど、止まれなかった。
「私はここを守りたいんです。この場所は、両親との思い出だけじゃなくて、子どもたちにとっても大事な居場所で……売りに出されていたことすら、私は知らなかったんです」
少ししても返事がないことに不安になってゆっくり頭を上げると、朝霧社長は感情の読めない目でこちらを見下ろしたまま、静かに問い返す。
「俺が買った金額で買い戻したい、という提案か」
「……はい。もちろん、すぐに全額なんて無理ですが、でもローンを組んで――」
「十億だぞ」