屋敷を守るための契約結婚だったのに、気づけば冷徹社長に囲い込まれていました
「……え?」
「土地と建物を合わせて十億。どの程度預金があるかしらないが、一介の会社員に、銀行がその額を貸すと思うか」
その瞬間、頭の中で何かが砕け散る音がした。
高額だとは思っていた。けれど、どこかで甘く考えていたのかもしれない。
十億なんて、現実味がなさすぎる。
「そんな……」
足元が揺らぐ感覚に、私は咄嗟に壁へ手をついた。そんな私を見ても、朝霧社長は一切表情を崩さない。
「買い戻すなど、無理な話だろう」
「でも……ここは、居場所のない子どもたちが来る場所なんです! 学校にも家にも居場所がない子が、ここなら安心して笑えるって……そういう場所なんです!」
「副業申請を出していたな。子どもの居場所づくり、だったか」
なんでそんな情報まで覚えているんだ、と思いながらも頷く。
「そうです。収入なんてほとんど赤字ですけど……でも、彼らにとっても必要な場所なんです」
「社会貢献としては悪くない話だな。だが、俺は正当な手続きを経てここを購入した。それに異議を唱えられる筋合いはない」
必死に訴える私に対し、朝霧社長は淡々と言い放つ。私は言葉を失った。
「むしろ、このまま無断で住み続ければ君の方が不法侵入者だ」
正論すぎて、余計に腹が立つ。
この人、本当に血が通ってるの? きっと血液も冷え切ってるに違いない。いや、もしかしたら紫色とかしてるのかもしれない。