屋敷を守るための契約結婚だったのに、気づけば冷徹社長に囲い込まれていました
一番緊張していた会長との挨拶を無事に終えた私は、ようやく緊張が少しほどけたような気がして、手にしたグラスへ口をつけながら小さく息を吐いた。
「少し落ち着いたか」
清正さんから声をかけられて振り向く。
「はい。会長へのご挨拶が終わったので」
「それが一番緊張していたのか。緊張する必要なんてなかっただろ」
清正さんは小さく笑いながらグラスを持ち上げ、その様子に私もようやく肩の力を抜きかけていた。
「そうだとしてもやっぱり緊張しますよ。ところで、ずっと疑問だったんですけど、普通、会長って、私みたいな立場の人間と大事な孫が結婚すると言ったら大反対じゃなかったんですか? 最初から反対する空気はなかったですし、しかもご両親の方も会長が説得されたんでしょう? なんでですか?」
「まぁ、それもそうだろう。結婚の気配もなかった孫が、やっと結婚すると言い出したんだ。この機を逃したらどうなるか、それくらい俺の祖父なら知っている」
やけに説得力のある言葉に、思わず頷いた。
そうはいっても、やはり家柄を全く気にしないでいられるものなのかは少しだけ疑問として残る。
「そもそも清正さんは婚約者とか……決められてしまうってことはなかったんですか」
「婚約の話はなくはなかったが、俺が全く取り合わなかったんだ」
清正さんはきっぱり言う。その言葉にホッとしている自分がいた。