屋敷を守るための契約結婚だったのに、気づけば冷徹社長に囲い込まれていました
「何ですと?」
「先ほどからあなたの奥様が、あちらで人の噂話をずいぶん熱心に広めていらっしゃいます。まずはご家庭をまとめられた方がよろしいのではありませんか」
目を向けると、女性陣の中で華やかな着物を着た女性が、大きな声でずっと話している。周りの女性たちは困ったような表情でそれを聞いていた。
本当に一瞬だけ、男性の表情が引きつる。
そして何も言い返せないまま、「失礼」とだけ言い残してその場を去っていった。
清正さんは気にも留めていないようで、遠ざかっていく後ろ姿を静かに見送っていた。
私はそんな横顔を見上げながら、少しだけ申し訳ない気持ちになる。
「すみません」
「何がだ」
「私なんかが横から口を出してしまって……」
私がそう言うと、清正さんはようやく視線をこちらへ向けた。
その目は先ほどまでの冷たさが嘘のように柔らかい。