屋敷を守るための契約結婚だったのに、気づけば冷徹社長に囲い込まれていました
「でも、このままじゃ子どもたちが困るし……両親にも顔向けできません……。私はここを出て行きたくない。どんなことでもしますから!」

 叫ぶように言った私を見て、朝霧社長が眉を寄せた。整いすぎた顔立ちだからこそ余計に怖い。

「どんなことでも、だと?」
「……は、はい」

 頷いたけど、目の前の社長の迫力に心臓がバクバクと大きな音を立てている。
 もしかして臓器を売られたり? いや、マフィアに全身売られたり?

 社長はそれくらい無慈悲にしそうなイメージだ。
 でも、私ができることは全部したい。それくらい私にだって覚悟はある。

「……そうだな。方法がひとつだけある」
「教えてください……! お願いします!」

 藁にもすがる思いで深く頭を下げた私を見下ろしながら、社長は口を開く。

「俺の妻になるなら、この屋敷を君の生活圏として保障できる。少なくとも、第三者に追い出される心配はない」

 会議と同じくらい淡々とした口調で言った。

 一瞬、言葉の意味が理解できなかった。
 いや、耳は確かに日本語として認識していたはずなのに、〝俺の妻〟という単語だけが妙に現実感を失ったまま頭の中をふわふわ漂っている。私は数秒遅れてようやくその意味を理解すると、弾かれたように顔を上げた。

「ちょ、ちょっと待ってください! 今、なんて言いました!?」
「俺の妻になれば解決するという話だ」

「聞き間違いじゃなかった!」

 思わず声が裏返る。
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