屋敷を守るための契約結婚だったのに、気づけば冷徹社長に囲い込まれていました

「昨日、清正さんはうちの会社に来ていたの。興味があるって言ってね。それはそうよね。結婚したら、朝霧不動産と九条不動産は切っても切れない仲になるんだから」
「結婚って……」

 玲子さんはそんな私を見て満足そうに微笑む。

「正しい場所に戻るだけ。あなたと離婚して、私と結婚するの。子どもなんてできてなくてよかったわ。彼の血を引く子どもは私が産むから」

 あまりにも当然のように言われたその言葉に、私は何も返せなかった。
 肝心の清正さんは二日も帰ってきていない。しかも帰ってきたら話があると言われている。

 そんな状況で何を言えばいいのかわからなかった。

 玲子さんは私の沈黙を肯定と受け取ったのか、ゆっくりと髪をかき上げながら続ける。

「まあ、諦めなさい。あなたと私たちでは、最初から住む世界が違っただけよ。あの人もばかじゃない。最初はあなたに惑わされたかもしれないけど、ちゃんと気づいてくれたわ。血って本当に大事だもの」

 昔から彼女にずっと言われてきた『九条家の血』が、ここで、こんな形でまた突きつけられるなんて。

「それじゃあ失礼するわ」

 玲子さんは最後まで余裕を崩さず踵を返し、そのままエレベーターへ向かって歩き出した。
 私はその背中を見送ることしかできなかった。
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