屋敷を守るための契約結婚だったのに、気づけば冷徹社長に囲い込まれていました

 思わず叫ぶと、社長はわずかに息を吐き、その視線を静かにこちらへ落とした。
 呆れているのかと思ったけれど、その目には感情的な色がほとんどなく、むしろ私の反応を一つひとつ冷静に観察して分析しているような雰囲気があった。

 結婚の提案、つまりはプロポーズをしている場面だと言うのに、余計にこの人らしいと思ってしまう。

「そ、それにしても、どうして社長には『配偶者が必要』なんですか?」
「祖父や父からも結婚については以前からうるさく言われていた。だが、資産や立場目当てで近づいてくる人間ばかりでな。信用できる相手がいなかった」
「私は信用できるんですか……?」

 思わず聞き返した瞬間、社長はすぐには答えず、数秒だけ沈黙した。
 その短いはずの間が妙に長く感じられて、私は落ち着かない気持ちのまま指先を握り締める。

「……少なくとも君は、この屋敷に対する執着が誰よりも強い」
「それ、褒めてます?」
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