屋敷を守るための契約結婚だったのに、気づけば冷徹社長に囲い込まれていました
気付けば俺は、必要もないのにわざわざ総務部の前を通り、遠回りをするようになっていた。
廊下ですれ違う社員たちへ笑顔で挨拶する姿。
取引先からの電話で明るく応対する姿。
困っている同僚を自然に手伝う姿。
夏音は昔と変わらなかった。
表情豊かで、誰にでも優しかった。けれど、変わった部分もあった。
子どもの頃は無邪気に走り回っていた彼女が、今では責任感を持って仕事へ向き合っている。失敗すれば落ち込みながらも最後までやり遂げようとしていた。
気付けば俺は、彼女の顔を見ないと落ち着かないほどになっていた。
ずっと忘れていたはずの陽だまりは、知らないうちに再び俺の人生へ入り込み、今度はもう、簡単には手放せない存在になっていた。