屋敷を守るための契約結婚だったのに、気づけば冷徹社長に囲い込まれていました
彼の瞳が優しく細められる。
「そうだ。すごいな。名前、覚えていたのか」
柔らかな笑みが返ってきた。
「お、覚えてますよ……!」
私は思わず声を上げた。
「だって突然来なくなったじゃないですか。私、すごくショックだったんですから。だから……もう忘れてやるって思ったんです!」
「それで忘れたわけか」
図星を付かれて言葉に詰まる私を見て、清正さんが楽しそうに目を細める。
「それに昔と全然違いますし……!」
「そうか?」
「そうですよ! きょーくんって細くて華奢で白くて、本ばっかり読んでて、もっとこう……守ってあげたくなる感じでした!」
「今は?」
「今はうちの怖い社長です!」
即答すると、清正さんは声を立てて、心底楽しそうに笑った。
きょーくんは、昔はほんの少しだけしか笑ってくれなかった。あのときから私ね、きょーくんが思いっきり笑ったら、どんなふうなんだろうって、ずっと考えてた。
――私、あの頃からこんな笑顔を見たかった。