屋敷を守るための契約結婚だったのに、気づけば冷徹社長に囲い込まれていました
「よろしくお願いします」
とりあえず、玄関先で深く頭を下げると、朝霧社長は相変わらず感情の薄い顔のまま短く返事をした。
「あぁ」
「ええと……家事をするにあたり、食事の好き嫌いとか、洗濯物のルールとか、なにかあれば教えてください。あと掃除の頻度とか、生活音で嫌なものとか……」
「俺の服や下着は全て専属のクリーニング業者が回収に来る。それに渡しておけばいい。戻ってきたものはクローゼットへ。食べ物の好き嫌いは特にない」
「は、はぁ……」
「それと、平日は食事はいらない」
「……はい?」
私は思わず聞き返した。いらないって何。
社長は淡々と続ける。
「基本的に外で済ませるからな。会食も多い。日曜に出張が入っていなければ、日曜の夜だけ頼むことになる」
「日曜の夜だけ?」
「あぁ。面倒ならシェフを呼べばいいと思っているが」
「さすがにそれくらいさせてください! 洗濯も必要なくて、平日の食事もなくて、……そのうえ、食事までとなったら、それ、家事っていっても、私、掃除だけになりますから」
だって、十億の屋敷と引き換えに求められた役割が、ほぼ〝掃除担当〟だなんて、どう考えても割に合っていない。
こちらに有利すぎて、むしろ不安になる。