屋敷を守るための契約結婚だったのに、気づけば冷徹社長に囲い込まれていました
……いや、待って。それだと困るのでは?
だって、この契約結婚を終わらせるには、〝社長に私を好きになってもらう〟のが必要じゃなかった?
こんな接点の少ない生活で、一体どこに恋愛イベントが発生するのだろう。
私が内心でぐるぐる考え込んでいると、朝霧社長がふと思い出したようにこちらを見た。
「ところで、今日、婚姻届けを出していいか?」
「は、はいっ!」
急に現実的な話を振られ、私は慌てて背筋を伸ばす。
すると社長は、スーツの内ポケットから小さなケースを取り出した。
「形だけとはいえ、これはしておいてほしい」
「……え」
開かれたケースの中には、シンプルな結婚指輪が二つ並んでいた。
余計な装飾はないのに、一目で高級品だと分かる。女性用には小粒ながら質の良さそうなダイヤが埋め込まれていて、照明を受けてきらきらと光っていた。