屋敷を守るための契約結婚だったのに、気づけば冷徹社長に囲い込まれていました

 かといって寝室はもちろん別だ。

 二階建ての屋敷で、私の部屋は昔から使っている東側の一室。
 社長は迷うことなく一番離れた西の端の部屋を自室に選んだ。間には客間や書斎など四部屋もあり、顔を合わせようと思えば長い廊下を歩かなければならない。契約結婚とはいえ、互いの生活に極力踏み込まないようにという社長なりの配慮なのだろうか。……いや、もしかしたら、契約結婚を長く続けるための作戦だったらどうしよう。

 恋愛自体めんどくさそうな社長は、こんな契約結婚生活を一生続けるつもりみたいだし……。

 私はぶんぶんと頭を振ってから、慣れ親しんだ自室の天井を見上げた。そして、ベッドの中で何度目か分からない寝返りを打つ。
 窓の外では庭木が風に揺れて葉擦れの音を立てている。

 薬指にはめられた指輪を、さっきから気になって何度も触っていた。指輪に憧れていたわけじゃないけど、キラキラしていて浮き立つ気分にはなっている。

「……いやいや、違うでしょ」

 とにかく早く、私は社長に、好きになってもらわないといけないのだ。一生この生活を続けるつもりはないのだから……。

 しかし、相手はあの朝霧社長。社内で〝笑ったところを見ると、三日以内に死ぬ〟とか訳の分からない都市伝説まである人だ。
 そんな相手を好きにさせるって、難易度がかなり高い。

 ……そもそも、好きにさせるって何したらいいんだろう。

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