屋敷を守るための契約結婚だったのに、気づけば冷徹社長に囲い込まれていました

「……仕事しなきゃ」

 両頬を軽く叩き、自分へ言い聞かせるように小さく呟いて意識を切り替えようとした――そのときだった。

「社長!」

 部長の声がフロアに響き渡って、私は反射的に顔を上げた。
 そして次の瞬間、息を呑む。

 本当にそこに朝霧社長が立っていたのだ。

 普段なら役員フロアにいるはずの人物が総務部へ現れたので周囲はざわめき始め、社員たちが仕事の手を止めてちらちらと様子を窺う。そんな中、私はというと朝とは別の意味で血の気が引き、背筋をぴんと伸ばしたまま固まっていた。

 本当に、どうして社長が総務部に……。たぶん部長と同じことを私は思っている。
 社長はこちらへ視線を向けることなく部長へ何かを告げると、すぐに課長も呼び出され、三人そろって会議室へ向かっていった。
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