屋敷を守るための契約結婚だったのに、気づけば冷徹社長に囲い込まれていました
「いただきます」

 一緒に食卓についた社長は両手を揃え、思いのほかはっきりした声でそう言った。
 私は思わず目を瞬く。なんとなく言わないタイプだと思っていたのだ。

 忙しくて食事も仕事の延長みたいな人だと思っていたのに、意外にもそういうところはきちんとしているらしい。

「いただきます」

 慌てて私も続く。
 社長はスプーンを手に取ると、綺麗な所作でビーフシチューをすくい、そのまま口へ運んだ。

 私は自分の食事どころではなく、その様子をじっと見守る。

 どうだろう。大丈夫だろうか。口に合わなかったらどうしよう。急に不安になってきた。
 けれど社長はゆっくりと飲み込んだあと、わずかに口元を緩めた。

「うまいな」
「あ、ありがとうございますっ」
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