屋敷を守るための契約結婚だったのに、気づけば冷徹社長に囲い込まれていました
 食事を終えたあと、私たちはソファで微妙な距離をとりながらも、食後のデザートを食べてゆっくりとしていた。
 そんな穏やかな時間の中でワインを飲もうと言いだしたのは、意外にも社長の方だった。

「珍しいですね?」
「簡単だが、俺たちの結婚祝いにどうかと思って用意した。無理強いはしないが、よければ君も飲まないか?」

 そう言いながらキッチンにいった社長が差したボトルを見て、私は一瞬だけ迷った。
 けれど、緊張して神経が張り詰めすぎていたし、わざわざ結婚祝いに用意してくれたものなんて飲みたいと思ったのだ。

「じゃあ、少しだけ」
「あぁ」
「本当に少しだけですよ?」
「分かった」

 社長は綺麗な所作で二つワインを注ぎ、少ない方を私に渡す。
 私は恐る恐るグラスを口元へ運んだ。

 ほどよい酸味と香りが口の中に広がり、思っていたよりもずっと飲みやすく感じたのだが、それが良くなかったのかもしれない。
 一杯飲み終えた頃には、身体がふわりと軽くなったような感覚に包まれていた。

 目の前に座る社長の姿も少しだけ柔らかく見え、私は心地よい酔いに身を任せるように肩の力を抜いた。
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