屋敷を守るための契約結婚だったのに、気づけば冷徹社長に囲い込まれていました

 そう思って、ふとある考えが頭に浮かぶ。
 綿貫さんは社長秘書だ。つまり、社長を誰よりも知っている人物でもある。

「あの、綿貫さん。社長って、どんな人なんですか? プライベートもやっぱり厳しい人なんですか? 血も涙もないとか……」
「それはあなたの方がご存じなのでは?」
「そんなわけないです。一緒に住んでいても、ほとんど顔を合わせませんし」

 正直な気持ちを口にすると、綿貫さんは少し考えるように視線を伏せ、それからゆっくりと口を開いた。

「そうですね……常に朝霧家のためを考え、数手先を読んで動いておられます」

 それは、なんとなく納得できる。
 そう思っていたら綿貫さんは続けた。

「しかし、最近一つ、何を考えているのか分からない事例もありましたが……」
「例えば?」
「九条さんとの結婚です」

 きっぱりと言われて、私は思わず苦笑した。
 確かにそれはそうだ。社内で最も驚いたうちの一人が綿貫さんなのかもしれない。
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