屋敷を守るための契約結婚だったのに、気づけば冷徹社長に囲い込まれていました

 その後の私は、朝の通勤電車で吊り革につかまりながらも、湯船に浸かってぼんやり天井を眺めているときも、布団に入って眠気が訪れるまでのわずかな時間でさえも、頭の中を占めているのはただひとつ――どうすれば社長をドキドキさせられるのか、という一点だった。

 そもそも手料理を振る舞ったり、一緒に出かけたりして距離を縮めるという恋愛の定番くらいは私にも理解できるし、実際そうやって恋人同士になっていく人たちが世の中にはたくさんいるだろう。

 しかし、問題は相手があの社長だということ。

 高級レストランなど仕事の接待だけでも数え切れないほど行っているだろうし、有名な夜景スポットだって見慣れているはずだ。私が思いつく程度のデートプランなどとっくの昔に経験済みなのではないか。何を提案しても決め手に欠ける気がして、ますます迷宮入りしていた。

「うーん……」

 スマホを握ったまま唸れば、検索履歴には【男性 喜ぶデート】【恋人 距離が縮まる場所】【ドキドキさせる方法】など恥ずかしくなる単語がずらりと並ぶ。私は思わず画面を伏せながら、自分でも何をやっているんだろうと頭を抱えた。

「いや、でも諦めるわけにはいかないし……」

 契約結婚を早く終わらせるためには、社長に私を好きになってもらわなければならないのだから。
 そう自分に言い聞かせながらネットの記事を読み漁っていたとき、私はある考えがひらめいた。
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