屋敷を守るための契約結婚だったのに、気づけば冷徹社長に囲い込まれていました

 ――そうだ、ネットじゃなくて、経験者に聞けばいいんだ。

 なぜ最初からそうしなかったのか。恋愛経験がほぼ空白の私がひとりで悩んだところで限界があるのだから、恋愛のプロに相談した方が早い。

 そして幸いなことに、社内にはその条件にぴったり当てはまる人物がいた。
 後輩の森本省吾くんである。

 実は、彼は入社して以来ずっと女性関係の噂が絶えず、彼女ができたと思えば別れ、別れたと思えば新しい恋人ができているという驚異的な恋愛回転率を誇っていた。つまり社内の誰もが認める恋愛上級者なのだ。

 さらに噂によれば、一時期は五人同時に付き合っていた経験があるらしい。
 本当だったらもはや人間業ではない。人間離れしている社長対策にぴったりである。

 私は昼休みの開始と同時に、周囲に聞こえないよう小声で彼へ声を掛けた。

「森本くん、ちょっといいかな?」
「はい?」
「お昼、一緒にどう? 奢るから」
「行きます!」

 返事が異常に早かった。
 しかも目を輝かせながら即答した森本くんを見て、私は思わず苦笑する。

「現金だなぁ」
「先輩、無料ランチを断る男なんていませんよ」
「そういうもの?」
「そういうものです」
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