屋敷を守るための契約結婚だったのに、気づけば冷徹社長に囲い込まれていました

 にこにこと笑う彼に促されるようにして会社近くのカフェへ移動した私は、ランチが運ばれてくるのを待ちながら、早速本題を切り出した。

「あのね、森本くん。男の人が喜ぶデート先って、どこだと思う?」

 私が思い切って尋ねると、森本くんは一瞬だけきょとんと目を丸くしたものの、すぐに何かを察したように頷いた。

「あー、彼氏さんですか」
「まぁ……そんな感じ。ドキドキさせたいっていうか、もっと好きだなって思ってほしいんだよね」
「なるほどなるほど」

 当然ながら契約結婚の事情など知らない彼は、普通に恋愛相談だと思ったらしく、どこか楽しそうな顔で腕を組む。

「定番なら映画とか水族館とかですかね。遊園地もいいですよ」
「なるほど」
「あと夜景を一緒に見る」

 私は一応メモを取るふりをしながら頷く。
 確かに悪くない。悪くないのだけれど。

「でもね……相手が普通じゃないっていうか」
「普通じゃない?」
「怖いし、仕事人間だし、笑わないし……。普通の人が喜ぶようなプランで喜ぶとは思えなくて……」

 森本くんがだんだん不思議そうな顔になっていく。

「先輩、それ本当に彼氏です? なんか説明だけ聞くと、彼氏というより難しい取引先みたいなんですけど」

 ある意味当たっているかもしれない。
 けれど実際、社長は恋愛対象として考えるには難易度が高すぎる相手だ。

 普通の恋愛理論がどこまで通じるのかも怪しい。
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