屋敷を守るための契約結婚だったのに、気づけば冷徹社長に囲い込まれていました

 落ち着かないまま、その日はやって来た。

 待ちに待った祝日――と言いたいところだけれど、実際には楽しみと緊張が半分ずつ入り混じっている。朝から妙にそわそわして、何をしていても気持ちが落ち着かなかった。

 午前中は家事をして過ごした。
 洗濯物を干している間も、掃除機をかけながらも、明日以降の食事の下準備をしながらも頭の中にあるのは今日の予定ばかりで、気付けば時計を確認して、そのたびにまだこんな時間なのかと肩を落とす。

 映画館までの移動時間。乗り換え。上映時間。食事の予約。夜景。
 私は何度もスマートフォンを開いて確認し、そのたびに完璧だと自分に言い聞かせていた。

「大丈夫、大丈夫……ちゃんと調べたし、予約もしたし、移動時間だって確認したし、これ以上準備できることなんてないんだから。完璧なデート計画よ」

 そして予定の時間が近付いた頃、屋敷の前に車が停まる音が聞こえた。
 私は勢いよく廊下を駆け抜け、そのまま玄関まで一直線に向かう。

 そして扉が開いた瞬間、私は声を上げていた。

「おかえりなさいっ!」

 その途端、目の前に立っていた社長が珍しく目を見開いた。
 本当に一瞬だったけれど、いつも冷静な彼が面食らったような顔をしたのが分かって、私はすぐに我に返った。

 やってしまった。
 待っていたせいか、どう考えてもテンションがおかしい。
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