屋敷を守るための契約結婚だったのに、気づけば冷徹社長に囲い込まれていました
 目の前にいる彼女が笑うだけで嬉しくなり、楽しそうにしているだけで安心し、もっと見ていたいと思う。
 だからこそ何もできなかった。

 今の関係を壊したくなかったし、何より俺はまだ何も成し遂げていない。
 そうやって必死に理性を保っていたというのに、その努力をあっさり無意味にする出来事が起きた。

 ふいに肩へ柔らかな重みが乗ったのだ。

 一瞬何が起きたかわからなかったが、視線を向けた先にあったのは俺の肩へ頭を預けている夏音の姿で、思わず息を呑んだ。
 本当に勘弁してほしい。

 夏音は身の危険というものを感じないのだろうか。男を何だと思っているのか。
 何も起きないと信じているからこその無防備なのだと理解している。

 それだけ信頼されはじめているのかと思えば嬉しい。
 しかし同時に、男として見られていないのだと突きつけられているようで少し情けなくもあった。
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