屋敷を守るための契約結婚だったのに、気づけば冷徹社長に囲い込まれていました

 基本的には、会場のセッティングと資料印刷、資料配布を担当する段取りになっている。
 昔はお茶出しまで総務の仕事だったらしいが、現在は『時間の無駄』という社長判断によって廃止されていた。その代わり、ペットボトルだけを用意しておく方式になっている。

 言われるままに、会議資料の仕分け、人数分の確認、席順の最終チェックと慌ただしく動き回り、気づけば開始時刻が目前まで迫っていた。

 私は役員会議室の扉前へ移動して扉を開け、頭を下げながら役員たちを迎える。
 朝霧グループの役員は、ほとんどが朝霧家の人間だ。社長の親族ばかりのせいか、一人ひとりの存在感が尋常ではない。

 これが朝霧家の血縁……。

 それは、九条家でも感じるときが多々あった。
 高級スーツを着ているからとか、肩書きがあるからとか、そういう単純な理由ではなく、生まれながらに人の上に立つことに慣れているような独特の威圧感があるのだ。

 私は必死に表情を保ちながら来客を迎え続ける。
 その時、社長が会議室へやって来た。いつものように堂々とした様子で歩いてくる。

 けれど、私の前を通り過ぎる直前、社長の足がほんの一瞬だけ止まった。
 そして視線がこちらへ向いた気がしたが、何も言わず、そのまま会議室へ入っていく。

 私は最後の役員を案内し終えると、静かに外へ出た。
 扉を閉めようとして、ふと会議室の中へ視線を向ける。

 ふいに、社長の顔が真正面から見えた。
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