雪恋
迂闊だった。
ニコリと、グレー男に笑われる。
この人は私の反応を見てーーー試していたんだ。
「ごめんね。
噂は……本当なのかなって思って。
試したんだ。
そこまで傷つくまで「虐待」されていたんだーー「煩いなぁ!!」」
口の中で、組織が切れる。
鉄の味がした。
「虐待されてなんて、ない!!
私は、傷ついてなんてない!!」
自分でも分かってる。
もう、体も心も悲鳴を上げていることを。
それでもなお、剣道に執着してしまう。
それは多分、自分を弱いと思いたくない。
だからだ。
「自分を弱いと思えば、傷ついてしまうから強くあろうとしてる?
違う?」
「私は……強い。
そう、強いの。
この雪のように、真っ白で芯があるの」
「でも……雪はすぐに溶けるよ」
上を見上げて、そっと息を吐く。
白い煙が、雪に混じって溶けてゆく。