むすび洋菓子店 ―人との縁と縁をつなぐ―

ひとつになったお店

 結月に赤ちゃんができてから、るいは以前よりも結月のそばにいる時間を大切にするようになった。

 雑貨屋の仕事をしながら、離れた場所にいることが少し心配だった。

「結月の近くにいたい」

 るいは、そう思うようになった。

 そして二人で話し合い、るいの雑貨屋は閉店することにした。

 けれど、るいの仕事がなくなったわけではない。

 むすび洋菓子店の空いていたスペースを大きく使い、そこを雑貨のコーナーにした。

 以前よりも広くなった店内には、るいが作った雑貨がたくさん並んでいる。

 アクセサリー。

 小さな置き物。

 海をモチーフにした雑貨。

 そして、結月の焼き菓子。

 二つの店が、一つの場所に集まった。

 店の入り口には、以前と変わらない看板。

 むすび洋菓子店

 その下には、

 ――人との縁と縁をつなぐ

 という言葉。

「なんだか、本当に一つのお店になったね」

 結月が笑う。

「うん。私はこっちのほうが好き」

 るいも笑った。

 その日の午後。

 るいはショーケースの前に立っていた。

「いらっしゃいませ」

 お客さんが来ると、笑顔で接客する。

「こちらは今日焼いたチーズケーキです」

「じゃあ、それをお願いします」

「ありがとうございます」

 るいはケーキを丁寧に箱へ入れる。

 その少し奥では、結月が厨房に立っていた。

「次は……チョコレートケーキ」

 結月は生地を混ぜながら、ふっと笑った。

 以前なら、一人で店を切り盛りしていた。

 けれど今は違う。

 すぐ近くに、るいがいる。

 少し疲れたときには、声をかけてくれる。

「結月、大丈夫?」

「うん。大丈夫」

「無理しないでね」

「分かってるよ」

 るいはショーケースの前で仕事をしながら、ときどき厨房の結月を見る。

 結月も、その視線に気づくと笑う。

 二人の間に、言葉にしなくても分かる安心感があった。

 ふと、結月はお腹に手を添えた。

「この子も、ここで大きくなっていくんだね」

 るいが振り返る。

「うん」

「私たちのお店で」

「私たちの家族と一緒にね」

 結月は嬉しそうに笑った。

 ケーキの甘い香りと、雑貨の小さな輝き。

 人が集まり、笑顔が生まれる場所。

 むすび洋菓子店は、いつの間にか二人の夢だけではなくなっていた。

 これから生まれてくる、小さな家族の居場所にもなっていた。
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