71歳の恋愛小説家
幼かった加奈子はその辺の事情はよく分からなかったが、祖母が必ず加奈子に毎日拭き掃除をさせたのだ。

そして叔母が仕事から帰ってくると、毎日必ず加奈子が掃除したよと言っていた。

友達と遅くまで遊んでいて、拭き掃除は嫌だと言って離れで宿題をしていると、帰ってきた叔母に今日も、加奈子が掃除したよと言っている祖母の声が聞こえた。

祖母は自分で掃除して加奈子が掃除したと言っていたのだ。

その家には長い板の間の廊下があったので、毎日居間の前の長い廊下と離れまで続く廊下を掃除させられていたのだ。

加奈子は端から端まで濡れてしっかりと絞った雑巾を前に置いて四つん這いになってさ~と走っていくのだ。

それを高齢の祖母がやるのは大変だ。きっと座って少しずつ拭いていたのだろう。

その時モップなどというものは家にはなかった。

それからは加奈子は絶対に掃除をさぼらなかった。

遊びに行く前に掃除を終わらせてから行くようにしたのだった。

小学校の四年生くらいの時に横に座っている男の子が先生から、二十四色の色鉛筆を貰っていた。

その頃の色鉛筆は六色や十二色が一般的だったので、二十四色といえば憧れの色鉛筆だったのだ。

先生になぜ彼だけもらえるのかと聞いたら、その子は母子家庭だからだと先生が言ったのだが、父親も母親もいないという加奈子なら二十四色が二個もらえるのではと思った。

加奈子がもらえないのは納得いかなかったが、母子家庭と言う事で彼に少し同情した。

加奈子は両親とは暮していないが祖父母がいた。

かなり後で分かったことだが、加奈子は祖父母の養女になっていたのだ。

だから母子家庭でも父子家庭でもなかったので、24食の色鉛筆を貰えないのは当然だったのだ。
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