71歳の恋愛小説家
そんな風に加奈子は人生の晩年を相変わらず恋愛小説を書きながら、豊かな自然の中でゆったりと一日一日を大切に丁寧に生きた。

子供達や孫達はよく顔を出してくれた。

そしてお正月の休みのは、家族総出の食事会がホームの近くの会員制のホテルで開かれる。

皆一泊していくので心置きなくお酒を飲んでいた。

皆でルーテイーンを組んで、加奈子が寂しくないように月に二回は誰かが来てくれるようにしているようだ。

中でも孫の健司は必ず月に一回は来てくれていた。

”ばあばには恩しかない”と言って、曽孫の顔も嫁と二人でみせに来てくれた。

曽孫まで抱かせてもらえて本当にありがたいと健司には感謝した。

そして、夫の一七回忌の法事を名古屋の夫のお骨を預けているお寺で済ませた。

その一ケ月後に、加奈子はホームの自室に倒れている所を朝食に降りてこないのを不審に思った職員に発見された。

その時にはもうすっかり冷たくなっていた。

子供達は加奈子の希望通りに夫のお骨を預けていたお寺で、葬式を出して加奈子のお骨も預けてくれた。

加奈子が望んでいたように、葬儀は家族だけが集まって見送ってくれた。

子供達はうちの両親は子供に病気の介護すらさせないで、ある日突然に死んでしまったと複雑な心境のようだった。

「きっと母さんは望んだとおりの引き際だったんだろうな、いつもピンピンコロリと逝けたら幸せといっていたよな」と長男

「思った通りに人生を終えられて、幸せな人だよな」と次男

「母さんはすごい人だよ。私がこうして今悠々と生きていられるのはあの時母さんが毅然として涼介を断罪して、生きていく道筋を建ててくれたからだもの。感謝しかない。でも自分はなるべく家族に迷惑をかけないように、消えたいわと言って笑っていたわ。そしてその通りに死んでいった。本当に悔いなくお父さんの所に逝ったね。きっと大満足で再会しているわ」

長女の裕子はそう言って母親を偲んでくれた。

加奈子は八十四歳の生涯を、地に足を付けてしっかりと生きた。

遺書も弁護士に預けてあって不動産は、子供たちのそれぞれの持ち分の不動産に加奈子の持ち分をそれぞれに充てた。

現金や本の収入は、孫たちにそれぞれ二百万づつ渡して残りを三人で分けるようにと遺言してある。

相続税はもう心配しないでも皆払えるだろうと思っている。

思いもかけず人生の晩年に恋愛小説家として何冊か本も出して貰えて”心底おもろい人生だった”と子供たちに残した遺書の最後には、そう書かれてあった。
                                    完 
< 44 / 44 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

最強の王子は花売り娘に恋をする
kaiyuuhi/著

総文字数/70,848

ファンタジー70ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
シュバイツァー王国の第一王子フレデリックは魔法も強大で最強と恐れられ王宮でも孤独だった。  そんな王城を抜け出していたある日王都の公園の前の広場で屋台の花売り娘と出会う。  美しくて心優しい花売り娘のジュリエッタは弟のエドガーと二人姉弟  ある日市場で花屋をやっていた母が火事で亡くなってしまった。  弟と二人きりになり茫然とするも明るく強く生きようとするジュリエッタに手を差し伸べるフレデリック  2人の婚約も調いかけたが貴族令嬢の虐めで心を病むジュリエッタ  そのせいでジュリエッタは隣国の祖父母の元に身を寄せる。   王位継承権も王子の地位も捨てて ジュリエッタを求めるフレデリック  最強の王子と心優しい花売り娘の恋は波乱万丈…
国宝級イケメン御曹司はフェチの所為で恋愛できない
kaiyuuhi/著

総文字数/9,979

恋愛(オフィスラブ)15ページ

超短編!フェチから始まる溺愛コンテストエントリー中
表紙を見る 表紙を閉じる
        大河内圭介(オオコウチケイスケ)28歳 オオコウチグループの御曹司。国宝級イケメンと言われるイケメン グループの一つである 大河内エステイトリゾートの副社長 二の腕フェチ自分の理想とする二の腕を求めすぎて、女性を愛せない。大学時代にプールで会った女の子の二の腕がずっと忘れられない所為なのだ。              ×          山野辺沙耶(ヤマノベサヤ) 24歳 副社長である圭介の第二秘書。  圭介の機嫌を読むのが得意な地味子の秘書 本当はスタイル抜群女優もしのぐ美人なのだが、男からのアプローチが、ウザすぎて地味子に変装している。 国宝級イケメンの副社長と、地味子に変装している秘書の急転直下の結末。     
表紙を見る 表紙を閉じる
          西城マリ(サイジョウマリ)22歳   同じ養護施設で育ったユキとマリはずっと一緒に   いる物だと思っていた。   養護施設を出た18歳から一緒に暮らし弁護士に   なるというユキの夢を支え続けた。   でもある日突然ユキは帰ってこなくなった。   マリはユキを探すためにモデルになった。   2年後ユキは見つかったが彼の横にはマリではない   女性が立っていた。                 刈谷周之(カリヤノリユキ)24歳   ユキは記憶喪失になっていた。記憶が戻った時には   ユキを慕う恩人の娘を見捨てることができなくて、   マリの所に帰れなくなっていた。   マリを愛するユキは、マリをもう一度この腕に   抱きしめることができるのか… 

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop