その青は廻る
個室に戻ると、二人はとても真剣な顔つきをしていた。数枚の紙を目の前に広げて、文字を書き込んでいる。赤で囲んだり、黒で斜線を引いたり、何かと慌ただしく見える。その様子を横目にしながら、静かにテーブルの隅へ飲み物を置いた。すると、すぐに翔太が声を掛けてきた。
「ありがと、気が利くね」そう言ってにっこりと笑う。けれど、頼まれただけのことで、さすがにその言葉を素直には受け取れない。咄嗟に「とんでもございません」と答えると、「普通に話そうよ、友達になれそうだし」と返ってきた。その途端に、吹き出すような息が聞こえて、軽い咳払いをしてから、彼が「少し早いけど、休憩していいぞ」と言った。
言われるがままに個室を出て、先程の場所へ向かう。近所のファミレスやカフェ、スーパーを携帯で検索する気力もなくて、自販機の前にある椅子に腰を下ろした。そこには灰皿もあって、スペースは少し窮屈だったけれど、居心地は悪くなかった。
自然に壁側へ頭を傾けて、視線を上げると、先程の青と赤が目に入る。じっと見つめるうちに、徐々に視界がぼんやりして、昔の記憶が流れてきた。
それは別の夏の日だった――
『戸田さん、何にしますか?奢りますよ』と言いながら、自販機の前で手招きした。
『コーヒーがいい』両手をポケットに入れて、少し気だるそうにしながら、こちらへ向かってくる。
『あったかいのでいいですか?』冗談で返すと、『アホか』と軽く笑って、財布を取り出した。そして、コインを入れながら、『何か欲しいものでもあるのか』と聞いてきた。待っていた言葉を耳にして、すぐに『佐伯さんのCD特典がほしい』と言うと、困ったような顔をして、『限定グッズだろ。高いぞ、あれ』と言った。それを貰ったのは、同じ夏の日だった――
ふと息を漏らしたところで、次第に悲しくなった。けれど、あの時間が懐かしい、とは言えない気がした。
「ここにいたんだ」軽やかな声がして、顔を向けると、翔太が缶コーヒーを手にして、口元を上げていた。
「お疲れ様です……」そう返しながら、咄嗟に言葉を飲み込む。すると、翔太が「佐伯はトイレに行った」と言った。
『なんだ君は、テレパシーでも使えるのかい?』と思ったが、上司なら、軽い紹介くらいはしてるだろう。翔太の口ぶりからも、そんな気がした。脳裏の冗談を追いやり、ふと気づけば、隣に翔太が座っていた。
「ありがと、気が利くね」そう言ってにっこりと笑う。けれど、頼まれただけのことで、さすがにその言葉を素直には受け取れない。咄嗟に「とんでもございません」と答えると、「普通に話そうよ、友達になれそうだし」と返ってきた。その途端に、吹き出すような息が聞こえて、軽い咳払いをしてから、彼が「少し早いけど、休憩していいぞ」と言った。
言われるがままに個室を出て、先程の場所へ向かう。近所のファミレスやカフェ、スーパーを携帯で検索する気力もなくて、自販機の前にある椅子に腰を下ろした。そこには灰皿もあって、スペースは少し窮屈だったけれど、居心地は悪くなかった。
自然に壁側へ頭を傾けて、視線を上げると、先程の青と赤が目に入る。じっと見つめるうちに、徐々に視界がぼんやりして、昔の記憶が流れてきた。
それは別の夏の日だった――
『戸田さん、何にしますか?奢りますよ』と言いながら、自販機の前で手招きした。
『コーヒーがいい』両手をポケットに入れて、少し気だるそうにしながら、こちらへ向かってくる。
『あったかいのでいいですか?』冗談で返すと、『アホか』と軽く笑って、財布を取り出した。そして、コインを入れながら、『何か欲しいものでもあるのか』と聞いてきた。待っていた言葉を耳にして、すぐに『佐伯さんのCD特典がほしい』と言うと、困ったような顔をして、『限定グッズだろ。高いぞ、あれ』と言った。それを貰ったのは、同じ夏の日だった――
ふと息を漏らしたところで、次第に悲しくなった。けれど、あの時間が懐かしい、とは言えない気がした。
「ここにいたんだ」軽やかな声がして、顔を向けると、翔太が缶コーヒーを手にして、口元を上げていた。
「お疲れ様です……」そう返しながら、咄嗟に言葉を飲み込む。すると、翔太が「佐伯はトイレに行った」と言った。
『なんだ君は、テレパシーでも使えるのかい?』と思ったが、上司なら、軽い紹介くらいはしてるだろう。翔太の口ぶりからも、そんな気がした。脳裏の冗談を追いやり、ふと気づけば、隣に翔太が座っていた。