その青は廻る
 推しがすぐ隣に居るというのに、気の利いた言葉が見つからない。何とか話題を探しながら、自販機の赤を目にしたときだった。

「佐伯とは、どこで知り合ったの?」翔太は軽く足を組んで、コーヒーを口にする。

 なるべく隣を見ないようにして、少しだけ距離を開けるように座り直す。

「幼馴染が、仕事を紹介してくれて……」

「ふーん……」と言いながら、片手でポケットを探っている。右手に持った缶が、零れそうなほど傾いていた。

「ていうか、佐伯ってうるさくない?」愚痴のように言って、缶を太ももの間で挟むと、煙草を取り出す。そのまま火を点けると、ため息のように吐き出した。

「そんなことは、ないと思いますけど……」と返してみたものの、印象が違うのは、性別のせいかと思った。

「なんか、細かいっていうかさ」そう言いながら、こちらの缶を手にすると、プルタブを開けてくれて、そっと手の中へ戻した。

「ありがとうございます」と答えると、「それにさ……」と言い出して、こちらに顔を向ける。

「いつも、こーんな顔して『どうした?問題でもあるのか』って格好つけてさ」眉間に皺を寄せて、彼の顔を真似ると、軽く鼻で笑った。

「そんなことも、ないと思いますけど……」苦笑いしたけれど、なぜだか笑えた。口にしたジュースが、少しだけ甘酸っぱい気がした。

「仕事は真面目だけど、プライベートはちょっと乱暴だし……」呆れたような口調で吐き出すと、間も置かずに続けて「おまけに音楽が趣味で、彼女もいないとか……」信じられないという態度で、軽く肩をすぼめた。

そこまで聞いたところで、ふと笑っていた。

「仲がいいんですね」

「まぁ、腐れ縁かな」そう言って、翔太は口の端を上げた。続けて「玉城ちゃんは?どうなの?」と尋ねてくる。

「どうって、言われても……」考えてみても、よく分からない。

「佐伯のこと、嫌い?」不思議そうな顔で、こちらを眺めている。

「なんですか、急に」少し不機嫌な声が出た。けれど……。

「だって、そういうふうに見えるから」そう言われて思い直すと、心当たりがいくつかあった。

「……嫌い、では、ないです……」考えながらも、口にしていた。でも、違うような気がして、「苦手なところは、ありますけど……」と答えた。

「そっか。僕も苦手なとこ、いーっぱいある」おどけながら言ったあとで、「そろそろ行こうか」と続けた。

 柔らかな空気の中で、その場を後にした。
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