その青は廻る
水を買って個室へ戻ると、歌音はブースのほうを眺めていた。少しだけ声を掛けようか迷って、静かに水を置いた。すると歌音はボトルを手にして、前を向いたまま、動きを止めていた。
その様子を横目にしながら、静かにソファーへ腰掛けると、歌音は話し始めた。
「昔ね……、龍ちゃんに酷く怒られたことがあるんだ……」そう言いながら、ボトルの蓋を開けると、一口飲んでから、再びブースへ視線を戻した。「なんで、こんなことも出来ないんだって」ふと笑って、こちらへ向く。
「厳しかったんですね……」そう返してみると、
「ここはこうだろ、そこは違うって、うるさくて。耳が取れるかと思った」と嫌そうな顔をしながら、笑みを浮かべた。
こちらが苦笑いをすると、「そのうち、嫌になって、殴ってやろうかなって思った」ふと鼻息を漏らした。
「殴るのは……」言い淀んで、気まずくなりながら、少し距離をあけて、腰をずらした。
そこで、ふと歌音は笑って、「実際にはしないよ。すっごくムカついてたし、喧嘩もしたけど……」と辺りを見回しながら、「でも……」と椅子のほうへ視線を向けた。
今にも彼が座りそうに見えた。けれど、椅子は背を向けたままだった。
「佐伯さんには、力どころか言葉も敵わない」歌音はそう言って、静かに首を振ると、短く息を吐いた。
歌音は前を向いたまま、「いつ会っても不機嫌だし、何言っても笑わないし……なのに」と息を吐くように水を飲むと、「最近、なんかおかしいんだよね……」と探偵のように、帽子のつばを触っている。
「なにか、あったんですか……?」胸がざわついていた。
「落ち着かないっていうか、上の空っていうか」歌音はそう言いながら、首を傾げて、長い息を吐くと、「多分だけど、女出来たな……あれは」と水を飲み込んだ。
「佐伯さんは、そんなことしないと思います……」そう言いながら、思いつくままに、「好きな人を悲しませたり、するような、人に見えません……」そう吐き出していた。
目の前の歌音は驚いた顔をして、息を飲み込むと、すぐに吹き出した。途端に大笑いして、あげくには手を叩き出した。
「私と龍ちゃんはそんな関係じゃないってば、ただのな・か・ま」と笑いを堪えながら、こちらを眺めている。
「な、んですか……」綺麗な顔で見つめられて、思わず戸惑った。
「別に。佐伯さんのこと、よく観てるなぁって、思っただけ」とボトルを手にして、おもむろに立つと、再びこちらを向く。
「そんな……見てません」そう言いながら、まともに目を合わせられなかった。
すると、歌音はふと笑って、「そろそろ行くね、付き合ってくれて、ありがと。またね」と可愛らしく言って、個室から出ていった。
その様子を横目にしながら、静かにソファーへ腰掛けると、歌音は話し始めた。
「昔ね……、龍ちゃんに酷く怒られたことがあるんだ……」そう言いながら、ボトルの蓋を開けると、一口飲んでから、再びブースへ視線を戻した。「なんで、こんなことも出来ないんだって」ふと笑って、こちらへ向く。
「厳しかったんですね……」そう返してみると、
「ここはこうだろ、そこは違うって、うるさくて。耳が取れるかと思った」と嫌そうな顔をしながら、笑みを浮かべた。
こちらが苦笑いをすると、「そのうち、嫌になって、殴ってやろうかなって思った」ふと鼻息を漏らした。
「殴るのは……」言い淀んで、気まずくなりながら、少し距離をあけて、腰をずらした。
そこで、ふと歌音は笑って、「実際にはしないよ。すっごくムカついてたし、喧嘩もしたけど……」と辺りを見回しながら、「でも……」と椅子のほうへ視線を向けた。
今にも彼が座りそうに見えた。けれど、椅子は背を向けたままだった。
「佐伯さんには、力どころか言葉も敵わない」歌音はそう言って、静かに首を振ると、短く息を吐いた。
歌音は前を向いたまま、「いつ会っても不機嫌だし、何言っても笑わないし……なのに」と息を吐くように水を飲むと、「最近、なんかおかしいんだよね……」と探偵のように、帽子のつばを触っている。
「なにか、あったんですか……?」胸がざわついていた。
「落ち着かないっていうか、上の空っていうか」歌音はそう言いながら、首を傾げて、長い息を吐くと、「多分だけど、女出来たな……あれは」と水を飲み込んだ。
「佐伯さんは、そんなことしないと思います……」そう言いながら、思いつくままに、「好きな人を悲しませたり、するような、人に見えません……」そう吐き出していた。
目の前の歌音は驚いた顔をして、息を飲み込むと、すぐに吹き出した。途端に大笑いして、あげくには手を叩き出した。
「私と龍ちゃんはそんな関係じゃないってば、ただのな・か・ま」と笑いを堪えながら、こちらを眺めている。
「な、んですか……」綺麗な顔で見つめられて、思わず戸惑った。
「別に。佐伯さんのこと、よく観てるなぁって、思っただけ」とボトルを手にして、おもむろに立つと、再びこちらを向く。
「そんな……見てません」そう言いながら、まともに目を合わせられなかった。
すると、歌音はふと笑って、「そろそろ行くね、付き合ってくれて、ありがと。またね」と可愛らしく言って、個室から出ていった。