その青は廻る
いつもは地下鉄で通る道の上の、見慣れない景色の中を、軽やかに車は走っていく。ゆっくりと窓に頭を預けて、そのまま空を仰ぐと、深海のような広さで、数粒の星が疎らに瞬いている。そこに掛かった大きな雲が、半分だけ千切れて、すぅっと流れていった。その様子が砂を払ったように見えた。
ふと、男の気配を感じ、視線を投げる。すると、ダッシュボードの中央辺りに、煙草と携帯が置かれていた。ちょうど手の届く範囲にある。
まるで切り札のように、はっきりと見える銘柄。その横に置かれた携帯にはストラップが付けられ、小さなチャームが左右に揺れていた。
それは、どこにでもあるような銀色の星で、自分も似たものを着けている。けれど、よく見れば虹色に輝いていた。そこで、浮上した名前に、思わず息を呑んだ。
『あり得ない』と、即座に消そうとした。けれど、幼馴染から貰った話と、実際に目にした男の職業は、それを裏付けるものがあった。
「佐伯……さん……」そう口にした声は、自分でもわかるほど頼りなく、吐いた息も震えていた。
「ん?……あぁ、わるい。勝手に連絡先入れた」
その言葉を聞いても、『同姓同名だ』と自分に言い聞かせた。
それでも、一度浮かんだ名前は、頭から離れてくれなかった。
「さすがに疲れたか」と軽く笑う声は、なぜか心地よくて、穏やかに響いた。
ふと、男の気配を感じ、視線を投げる。すると、ダッシュボードの中央辺りに、煙草と携帯が置かれていた。ちょうど手の届く範囲にある。
まるで切り札のように、はっきりと見える銘柄。その横に置かれた携帯にはストラップが付けられ、小さなチャームが左右に揺れていた。
それは、どこにでもあるような銀色の星で、自分も似たものを着けている。けれど、よく見れば虹色に輝いていた。そこで、浮上した名前に、思わず息を呑んだ。
『あり得ない』と、即座に消そうとした。けれど、幼馴染から貰った話と、実際に目にした男の職業は、それを裏付けるものがあった。
「佐伯……さん……」そう口にした声は、自分でもわかるほど頼りなく、吐いた息も震えていた。
「ん?……あぁ、わるい。勝手に連絡先入れた」
その言葉を聞いても、『同姓同名だ』と自分に言い聞かせた。
それでも、一度浮かんだ名前は、頭から離れてくれなかった。
「さすがに疲れたか」と軽く笑う声は、なぜか心地よくて、穏やかに響いた。