別府の湯けむり、君と50年の未来

小さなお姫様

 結婚式が始まる前。

 境内には、遥斗の会社の社員たちと、その家族が集まっていた。

 その中には、社員の子どもたちもいた。

 そして――雪が姿を見せる。

 長く美しい髪は優しく揺れ、透き通るような瞳には、光が宿っていた。白い肌には紅がよく映え、その頬には淡い色が差している。

 水色のレースをあしらった着物は、まるで空と海をそのまままとったようだった。

 子どもたちは、雪を見つけた瞬間、目を輝かせた。

「わぁ……!」

「お姫様みたい!」

「雪さん、お姫様!」

 小さな女の子が、雪のところへ駆け寄ってくる。

「綺麗!」

 雪は少し恥ずかしそうに笑った。

「ありがとう」

「本物のお姫様?」

「ふふっ。どうかな?」

 雪がしゃがんで目線を合わせると、子どもたちは嬉しそうに笑った。

「遥斗さん、いいなぁ!」

「お姫様と結婚するんだ!」

 その言葉に、周りの大人たちから笑い声が起こった。

 遥斗は、そんな雪をじっと見つめていた。

「……綺麗だ」

 五年前に再会したときよりも、ずっと美しくなった雪。

 けれど、笑ったときの表情は、あの日のままだった。

「雪」

「ん?」

「俺にはもったいないくらい綺麗だよ」

「もう……遥斗」

 雪は照れて頬を赤くする。

 その姿を見て、子どもたちがまた声を上げた。

「やっぱりお姫様!」

「空色のお姫様!」

 雪は笑いながら、子どもたちに手を振った。

「ありがとう。みんなにお祝いしてもらえて嬉しい」

 その笑顔を見ながら、遥斗は思った。

 ――この人を、一生大切にしよう。

 今日から始まる、二人の人生。

 雪はたくさんの人に祝福されながら、遥斗の隣に立っていた。

 まるで、空色の着物をまとった、本物のお姫様のように。
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