別府の湯けむり、君と50年の未来

幼馴染から妻へ

 結婚してからも、遥斗と雪は変わらなかった。

 小さい頃から一緒に過ごしてきた幼馴染。

 別府で遊んだ日も、離れて暮らした五年間も、そして再会した日も――。

 二人の間には、長い時間をかけて積み重ねてきた思い出があった。

 だからこそ、遥斗にとって雪が妻になったことは嬉しい反面、どこか不思議でもあった。

「遥斗、朝ご飯できたよ」

「ありがとう」

「昔から私が作ってあげたら、遥斗すぐ食べてたよね」

「昔は雪が作ってくれたんじゃなくて、おばさんが作ってくれてただろ」

「そうだったっけ?」

 二人で笑う。

 そんな何気ない会話も、幼い頃から変わらない。

 雪は家のことを楽しそうにしていた。

 そして、遥斗が仕事へ行く時間になると――。

「今日も頑張ってね」

「ああ。行ってくる」

「いってらっしゃい」

 雪は笑顔で送り出した。

 そして、しばらくすると会社へ顔を出す。

「皆さん、お疲れさまです」

「あ、雪さん!」

 社員たちが笑顔になる。

 雪は社員みんなの飲み物を持ってきたり、会社の掃除をしたりしていた。

「これ、皆さんで飲んでくださいね」

「ありがとうございます!」

 社員たちからも、すっかり親しまれている。

「社長、幼馴染だった奥さんが、今じゃ会社の人気者ですよ」

「昔からあんな感じだよ」

 遥斗は笑う。

「雪は、人のために何かするのが好きなんだ」

 社員の奥様たちも、雪の姿を見て微笑んでいた。

「本当に素敵なお嫁さんね」

「ありがとうございます。でも、私が楽しいからやってるだけですよ」

 雪はそう言って笑った。

 幼い頃から知っている女の子。

 大人になり、遠く離れても心の中にいた人。

 そして今は――。

 一緒に人生を歩む、大切な妻。

 遥斗は、会社で楽しそうに働く雪を見つめながら、そっと笑った。

「幼馴染だった雪が、俺のお嫁さんか……」

 雪が振り返る。

「何?」

「なんでもない」

「変なの」

 二人は顔を見合わせて笑った。

 幼馴染から夫婦へ。

 長い年月をかけて結ばれた二人の縁は、これからも続いていく。
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