別府の湯けむり、君と50年の未来

病室に響く笑い声

 遥斗の病室では、看護師さんがバイタルチェックをしていた。

「遥斗さん、体調はいかがですか? 痛みはありませんか?」

「少し痛みますけど、大丈夫です」

「無理はしないでくださいね。怪我をしていますから、今日はしっかり休んでください」

「はい」

 その隣で、雪は遥斗の顔を心配そうに見つめていた。

「本当に大丈夫? 痛かったらちゃんと言ってね」

「大丈夫だよ。それより雪のほうが心配」

「私?」

「妊娠したばかりなんだから。疲れてない?」

「私は大丈夫。でも、遥斗は怪我してるんだから、自分の心配してよ」

 看護師さんは二人の会話を聞きながら、思わず笑ってしまった。

「ふふっ。お互いに心配し合っているんですね」

「……恥ずかしいです」

 雪は照れて俯く。

 看護師さんは血圧を確認しながら、優しく続けた。

「でも、奥様も無理は禁物ですよ。今はお身体を大切にしてくださいね」

「はい」

「遥斗さんも、嬉しいからといって動き回らないでくださいね」

「……はい」

 遥斗は少し気まずそうに返事をする。

「赤ちゃんができたことが嬉しくて、社員さんたちに報告して回って階段から落ちたんですよね?」

「はい……」

 雪が呆れたように遥斗を見る。

「もう、ほんとに心配したんだから」

「ごめん」

 すると看護師さんがまた笑った。

「お二人とも、本当に仲がいいですね」

 雪は頬を赤くしながら、遥斗の手を握った。

「だって……大切な人だから」

 遥斗も雪の手を握り返す。

「俺も。雪と赤ちゃんが大切だから」

 看護師さんは二人を見て、優しく微笑んだ。

「お二人とも、今は身体を第一にしてくださいね。元気な赤ちゃんを迎えるためにも」

「はい」

 二人の返事が重なった。

 病室には、穏やかな笑い声が響いていた。
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