経営企画部の彼が半年間、彼女に連絡できなかった理由│Quiet Strength×Soft Strength2
「綾ちゃん」

 不意に呼ばれて後ろから抱き締められた。そして、いつかの様に司がすりすりと甘えてくる。

 あの時は可愛いだけで済んだことが、何故か今日はそれでは済まない。緊張に震えた耳元に小さな笑い声が聞こえてくる。久し振りだからかなと動揺の理由を考えた綾音に司が囁いた。

「今はつまんないこと気にしないで、俺と過ごすことだけ考えて」

 その言葉にぐうの音も出ない。だって自分だって、やっと会えた司と楽しい時間を過ごしたい。心配や不安を抱えずに甘えたい。

 お金は後でも払えるし、舞に確認すればあっさり解決するかもしれない。その時に、あの時こんな事を気にせず楽しめば良かったと後悔したくない。

「ね?」

 見上げると目が合った司は優しく笑ってくれる。ほっとした。

「…うん…」

 この半年。待てたけれど寂しくなかった訳じゃない。会いたかったし、恋しかった。その心をちゃんと満たしたい。

 もしもこの時、綾音がさっきの本能を信じていれば。

 司がそれよりも、もっと満たされたいと思っていることに気付けば。

 迂闊な油断はしなかったかもしれない。
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